1月1日付の地元紙『網走タイムズ』紙面です。
いつも一面を買い切ってスペシャル年始広告を作っているのですが、2012年は記事風にまとめました。
いろいろあった2011年を振り返りつつ、新しい年への展望を。
最終的に見出しや割り付け、写真セレクトなど紙面構成は網走タイムズさんにお願いしたのですが、記事を書いてた時の自分の中の隠しテーマが「あきらめない!」だったのですよ。
拡大しても読みにくいかもしれないので原稿を転載します。
見出しや写真が入らないので少し長くて読みにくいかもしれません。
網走監獄はあきらめない!
東北大震災は、網走の主産業の一つ観光にも大きな影響をもたらした。
博物館網走監獄も入館者数減少という打撃を受けた。
しかし今年開館から30年の節目となる網走監獄は、あきらめず前進を続けようとしている。
昨年一年を振り返り明日への展望を聞こう。
2010年2月、博物館網走監獄は3億円近い費用を投入し展示施設『監獄歴史館』リニューアルを行った。
最新の映像展示や参加体験型展示を大胆に導入しつつも北海道開拓に果たした網走監獄の功績、網走市民と刑務所の関わりなどのストーリー、メッセージをしっかりと見学者に伝えることに熟慮した展示内容は好評を得た。
またリニューアルに併せて増加しつつあった海外からの入館者対策として屋外建築物解説、施設内展示解説を改修し中国語、韓国語、英語表記を併記する多言語対応を進めた。
網走監獄では前年の2009年で入館者数減少が底を打ったと推察し、2010年の歴史館リニューアルと海外からの利用者誘致対応策として展示解説の多言語対応などインフラ整備に着手することで歯止めをかけ、2011年から本格的に海外誘致比重を高めて入館者増を図る展望を持っていた。
しかし日本が大きな悲しみに包まれた3月11日。
「東日本大震災」「福島原発事故」。
この日を境に入館者は激減、海外からの利用者は完全に途絶えた。
折しも3月は博物館の新年度予算編成期、緊急に当初予算案を約15%縮小した。
だが厳しい状況は続き、予想を大きく下回る厳しい入館状況が襲う。
5月のゴールデンウイークも惨敗。
夏休み時期になり少し回復傾向を見せたものの12月の時点で前年対比2割近い減少となっている。
救いとなったのは修学旅行利用の増加だ。
震災の影響で東北への修学旅行を予定していた道央圏の中学校は急遽、旅行先を道内に求めた。
道東の小学校、本州からの高校迎え入れの実績を持つ網走監獄は素早い対応が取れた。
学校向けの体験学習メニューを公式ホームページからダウンロードできるサイトを設置した。
楽しみにしていた東北への修学旅行が急きょ変更になった中学生たちも、震災の影響を被ったことになろう。
せめてもと館内のテナント業者と連携してちょっとした網走のおみやげプレゼントなどの歓迎行事を企画したことなどが功を奏し最終的には約70校、8300名の中学生が網走監獄を訪れた。
次年度、約半数は東北訪問に復帰する見込みだが、博物館では地域と連携し継続して、道東、網走への誘致活動を進める。
2010年秋、網走監獄を舞台にして最先端技術の実証実験が行われた。
北海道が実施主体となった「北海道オホーツクみちびきプロジェクト・準天頂衛星みちびき・IMESシームレス測位実験」だ。
産学官が連携しての日本初の大規模な実験となった。
実験には、網走市内の小中学生の親子、東農大オホーツクキャンパスの学生が多数参加協力し、有効な実験成果が得られた。
またJAXAエンジニアや最先端分野の研究者による網走のこどもたちのための講演会も網走監獄を会場に開催された。
網走監獄は、実証の行われる技術が、今後の地域観光振興に役立つものになればと会場となることを引き受けたのだが、みちびきプロジェクトの実証実験はスマートフォンに内蔵されたGPS機能を利用するデジタルスタンプラリーを行うことにより高精度なGPS信号を発する国産準天頂衛星と屋内測位装置の観光分野における利用実証を行うものだ。
このシステムこそ網走監獄のような屋外型博物館、拝観施設において利用者への解説、誘導に理想的とも思われるものであり、早い時期での館内案内システム構築を再度計画し、海外からの観光客誘致に役立てるものとしたいと網走監獄は考えている。
この実験のために作成したスマートフォン用アプリ「ふらっと案内」上での博物館網走監獄コンテンツ(館内案内とデジタルスタンプラリー)は引き続き利用ができる状態だ。アプリは無料でダウンロードできる。
網走監獄見学の際には、お手持ちのスマートフォンやタブレット端末で最先端の技術を体験してみてはいかがか。
そして2012年、博物館網走監獄は設置から30年を迎える年、次の一歩を踏み出そうとしている。
運営に困難な情勢は続いている中、多くの課題をクリアするために前へ進む。
一つは設備の見直しだ。
すべての人にやさしい博物館であることを目指し、園地内の路盤、駐車場など設備改修に踏み切る。
併せて、昨年から取り組んでいる植栽による景観整備を完了させる予定だ。
次に保存公開している網走刑務所旧建築物の価値観を高めていくこと。
登録文化財として五翼放射状舎房、教誨堂、二見農場建築物群が認定されているが同時期に建築され、現在博物館で保存している7物件を登録文化財として認めていただくべく追加申請をしている。
できれば、先に登録を受けた3物件については重要文化財として認められるべき価値があるとの専門家の評価を受けていることもありこれを目指しての検討を進めている。
開館30年を記念し旧移築した物件の建築物としての美しさを表現する写真集の発刊も企画している。
そして、新しい制度上の公益法人認定取得だ。
博物館を設立することを目的に公益性を重視した財団法人であることを選択し、最初の投資に見返りを求めることができない「寄付行為」を選択した財団創始者たちの遺志を語り継ぐためにも重要な目標である。
昨年11月、申請書類が受理されており、新年度となる4月にはぜひ新しい公益財団としてスタートすべく作業が続いている。
今年も博物館網走監獄の動きから目が離せない。』