2020年4月4日土曜日

学芸員の解説情報5

網走監獄煉瓦の正門

前回に引き続き煉瓦建築について、今回は正門をご紹介します。
網走監獄の正門が木造か現在の煉瓦製になったのは大正時代です。網走監獄正門は大正8年から取り掛かり150万枚の煉瓦を焼き、1080mの長さで監獄施設を囲み完成したのは大正13年です。

開設から3代目の正門になります。
実に5年の年月をかけて築き上げたのです。監獄建築には機能性と管理側の思想が反映されていると言われています。正門は市民が一番先に目にする監獄建築です。その上で正門が具現化しているものは権威と象徴でした。

機能的には外部からの侵入攻撃を守るという意味から頑丈に造られています。また管理的には囚人が逃走できないように正門や塀の高さは監獄法で決められています。網走監獄の門と塀は4.5mの高さがあります。成人の肩にもう一人が乗ったとしても乗り越えられない高さが4.5mとの判断なようです。

デザイン性においては、建築家後藤慶二が大正4年に設計した「旧豊多摩監獄正門」と類似します。後藤慶二は、司法省の営繕技師建築家で、明治時代に活躍した山下啓次郎氏の後輩として大正期の監獄を設計しました。彼の装飾性の排除や合理的設計手法の導入などが積極的に獄舎設計に向けられ、豊多摩監獄の正門は、将棋駒型表門と称される屋根の形状が網走監獄煉瓦の正門と類似してるといっても過言ではないでしょう。高名な建築家のデザインを網走の担当技官も模倣したのではないでしょうか。
画像解説
上部の豊多摩監獄正門と類似しています。この正門の屋根の形態はキャンブレル形式といって二面切妻二段勾配屋根になっています。18世紀に英国や欧州から米国に伝承したものを取り入れて後藤がデザインしたものです。明治期の表現主義から昭和の合理主義建築への移行過程にある姿を示した事例として明治と昭和を結ぶ大正建築として希少な監獄建築です。

2020年4月3日金曜日

学芸員の解説情報4

網走監獄煉瓦造り独居房
(懲罰房)

博物館の中には煉瓦の建物が6棟あります。明治の監獄建築を25棟移築復原再現している博物館の中に6棟の煉瓦建築があります。

なぜでしょうか?

実は、明治時代の監獄は西欧の監獄を模倣し煉瓦の製造を囚人たちに指導し、監獄の中で煉瓦を焼いていました。焼き上げた煉瓦は囚人作業により積み上げ、監獄の塀、獄舎、独居房など多用しました。従来の監獄建造物は木造で火災に弱いので煉瓦建築を導入することで火災から囚人を守る意味もありました。

網走監獄では、明治27年に煉瓦製造を始めています。ここに紹介する独居房は明治45年に完成し昭和の初めまで使用された懲罰専用の独房で登録有形文化財に登録されています。独居房には窓がなく、扉は二重、しかも煉瓦壁の厚さ40センチと暗く圧迫感と閉塞感を感じさせる独居房ですが、屋根は瓦を葺いています。いかにも和洋折衷です。囚人たちにとっては恐怖を感じる建物でした。規則違反者を独居房に入れ反省させる房ですので泣き叫んでも暴れても囚人の声は外に漏れないのです。

懲罰専用の煉瓦造り独居房が残されているのは網走監獄だけです。




2020年3月31日火曜日

学芸員の解説情報3

網走監獄の中央見張り所

網走監獄の舎房は五棟の放射状に配置されています。この形式はベルギーのルーヴアン監獄を模倣して従来の並列型獄舎から放射状配置の舎房に建て替えました。放射状舎房の要になるのが、五棟の入り口中心に設置された八角形の中央見張り所です。

網走監獄の舎房は雑居房146房独居房80房、合計226房収容定員700名ですが、多い時には最大で1000名を超える囚人を収容していました。大勢を効率よく管理するために、この中央見張り所が考え出されました。中央見張り所に看守部長が就き、看守部長の指揮のもと各棟の廊下に担当看守1名が巡回するのみで大勢を管理できる仕組みです。

監獄の建造物はまず第一に逃走防止、大勢を管理する集合性、機能性が求められて建築されています。一般家庭のように快適性を求めて建築されていません。むしろ逆の発想です。中央見張り所を中心に放射状に配置される獄舎はフランス、ベルギーなど西欧において主流でした。この画期的な方法を日本の監獄建築に取り入れて北海道集治監や網走監獄の放射状舎房が誕生しました。







2020年3月30日月曜日

学芸員の解説情報2

網走監獄舎房の天窓

明治45年に再建された網走監獄舎房は、江戸時代の牢屋敷から脱却し欧米列強と肩を並べられるようにと司法省の技師が海外視察を重ね、近代国家日本の監獄に相応しい獄舎建設を推進したものです。和洋折衷の建築の中でも天窓は最たるものです。

  1. 高さ7.4mの屋根に取り入れた天窓ガラスは厚さ7mmそして鉄線が施されています。
  2. 天窓を通して光が差し込みます。
  3. 暗い牢屋敷から明るい舎房へ受刑者の心情にも配慮されています。
  4. 天窓を取り入れるためクイーンポストトラス(洋小屋組み)にしています。
  5. 小屋組みに強度を持たせるため鉄筋の開き止めが施され建築美を醸し出しています。