2011年1月6日木曜日
年始のご挨拶を・・・
恒例になっている地元紙への年賀広告掲載。
元旦号の一面を使って記事型広告を作る・・・なぜか (-_-;) 担当が続いています。
年末、〆切に追い込まれながらフウフウ言って作っているのですが・・
ついに今年はネタ切れ・・・
もうだめだっと思った時に、あの人がやってきました。
「外ごとの旦那、こんな時こそ、あっしの出番なんじゃないんですかい?」
・・よ、よろしくお願いしますぅ~・・と出来上がったのが、今年の紙面。
下側三段の広告にも登場してもらいました。
せっかくの記事、苦労したので、皆さんにも読んでいただきたく・・
紙面掲載時には、張り切りすぎて収まり切らなくなり少しカットされてしまいました。
今回は、ちょっと長めですが原稿の状態で転載します。
『寅吉の平成監獄語り』
網走町の皆さん、年始のごあいさつ申し上げますよ。五寸釘の寅吉でございます。
おっと、いけねえ、網走はとっくのとおに『市』に昇格してたんだっけねえ。
正月早々寝ぼけたことを。
しかも干支が卯年に変わっているのに『寅』が何で与太打ってんだなんて野暮は言わねえで下さいよ。
あっしがちょいと語らせていただきたいのは、お世話になっている網走監獄、博物館のほうの監獄なんでさあ。
「三度生まれ変わっても償いきれない」といわれた罪状を抱えちまった身上だあ。
レンガ門の前を終生、掃き清めてご奉公しようと思ってたんだが、博物館の皆さん、
それだけじゃあ済ませないよっと、お色直しをした監獄歴史館に『五寸釘寅吉の独り言劇場』と名付けた小屋を誂えてくださった。
「寅吉さん、あんたが網走監獄に収監されてた時に見聞きしたことをここで面白おかしく話してはくれませんか?」と学芸課長の姉さんにやさしく頼まれちゃあ、そりゃあ、この老いぼれも簡単には引き下がれねえでやんしょお。
あっしが釧路の監獄から網走に移されたのが明治三十四年、英昭皇太后様がご崩御されて大恩赦のあった時だあ、網走にいる間も明治の終わりにゃあ建物が丸っぽ焼けちまう大火事にあっちまうし・・・監獄から出してもらえた大正十三年、監獄は刑務所って名前に変わってたもんさね・・・網走監獄の節目節目を見ていたことを、姉さん、しっかり覚えてくれていたわけだあな。
この博物館の大親分さん、いや理事長さんと呼ぶんでしたなあ、一昨年の夏に五代目の方に変わられた。
今度の方あ、大親分と呼んだほうがしっくりとくる偉丈夫な御仁。
あっしもこの博物館の門前に三十年近く立ちっ放しだ、最初にお会いした時は網走の役場のお役人さんだった筈だあ。
お客さんをご案内してきちゃあ監獄の門前で、
「網走の街は監獄や刑務所だけではありません。流氷もある、美しい景観もある、うまい食べ物もいっぱいある!」とぶってたねえ。
それを聞いて、ここの若い衆達が「監獄に来て何を講釈垂れてやがる!」って怒っちまって。
それが今じゃあ一つ釜戸で仕事してんだから時が経つってえのは面白えもんだ。
で、去年の夏のことだ。親分さんが、
「なあ寅吉さん、あんたの独り言劇場が大好評で、寅吉の生涯について教えてくれよって、お客さんが多いんだ。昔出してた寅吉さんの本を復刻してみてえんだが、どうだい?」 そう仰っるんだ。
そうか、ちょいと昔、あっしのことをネタに郷土史家の先生が書いてくださった本のことかと思いだした。
だが、先生も亡くなっちまってご家族も網走を離れていた筈なんで、ちょいと難しい話かなあと思ってたんだがあ、何とか遠方のご家族にも渡りをつけて再版に漕ぎ着けた。
街中の本屋さんも「寅吉さんの本なら面白い、うちでも置きますよ」と預かっていただいて、ここまでで千冊近くも売れたらしい。ありがたいお話だあ。
そういやあ、秋口になって
「うちのレンガ門でお客さんが記念写真撮られても、あとで本当の刑務所と区別がつかないんじゃあ・・」と、
『博物館網走監獄』の看板を門に取付けた。丁度あっしが箒を持って立ってる後ろ側さ、こいつが好評なんでさあ。
ところが写真を撮るのは異国、大陸からのお客さんばかりだあ。
何でもあちらでは、今でも監獄は監獄、「刑務所」ってえ言葉より馴染みが好いらしい。
異国のお客さんが増えて去年の倍以上は来ていらっしゃるみてえだ。
日本の言葉は通じませんからねえ、監獄では建物の講釈も外の看板、中の看板、全部、五つのお国言葉に書き改めたようでさあ。
異国の方にも博物館を判ってもらおうとたいそう立派な案内冊子も準備されてやすよ。
何でえ、旦那さん。近頃は監獄の中、見てねえのかい?去年のお色直しで相当面白く立派になってんだよ。
ああ、ちょうどいいや、松の開ける頃までは「網走市民特別割引」をやってるよ。
木戸銭は半分に負けてくれるそうだ。この機会にちょいと足を延ばして御覧になってみちゃあいかがなもんかねえ。
あっしは、レンガ門の前で皆さんがお見えになるのを待ってますよ。
これからもずううっとね・・・