網走にもこんなにきれいな桜並木があります。
これは、昨年の開花期の様子。
本当にきれいでした。
ここ、『幻の桜並木』といわれています。
実は、この並木、網走刑務所の敷地内にあるので、そばによることが許されていないから、
桜の樹齢がいずれも百年を越え、いずれ寿命がつき、その姿を消してしまうから・・ということのようです。
そばで見ると一本一本は、こんな状況。
モノクロにしているので、ちょっと悲惨な感じを煽っているようですが、並木の延長が1200m、残っている桜は、あと125本だけ。桜の間隔はスカスカです。
何とか、その姿を残せないかと、思っている人達は多かったのですが、民間が簡単に手を出せる場所でもなく、
その規模も大きい。
しかし、この桜、大正2年に植えられた意味を考えると、博物館として何かできないかと考え、網走刑務所さんと交渉をしていたところ、このたび当館が並木の維持活動に協力をさせていただける運びとなったのです。
今年は、網走に刑務所が設置されてから120年目の節目の年でもあります。
桜並木に沿った道の草刈をしました。
幅3.6m(2間)の道路が姿を現しました。
120年前の囚人たちが作った中央道路に繋がっていた道です。感慨深いものがありました。
本格的な移植作業は来週になりそうです。
以下、先日、報道機関に発表をしたプレスリリースを転載します。
(プレスリリース)
網走刑務所二見ヶ岡農場敷地内の『桜並木』保全への協力実施について
財団法人網走監獄保存財団は網走刑務所二見ヶ岡農場敷地内の桜並木保全事業としてエゾ山桜40本の植栽を実施いたします。並木は、北海道中央道路跡地を示す歴史的指標ですので博物館事業として保全に協力させていただくこととし、網走刑務所敷地内に植栽されている桜40本の移植をするものです。
桜並木は、明治24年(1890年)に完成した北海道中央道路に連結する刑務所用地内から網走湖北岸を通る道沿い(現・道道104号網走端野線)に植えられたものです。大正2年(1913年)、今から97年前、当時の網走監獄二見ケ岡支所長「千葉敬次郎」が道沿いに桜を植樹することに着手しました。この時点で、網走湖南岸に通行の容易な新道と鉄道が完成しており、多くの犠牲を払って開通した中央道路の交通量は激減、道は荒んでいたそうです。桜並木作りが何を目的としたものかは記録として残されていませんが、最終的に移植された総数は2,000本に達したといわれています。
桜の少ない道東地区において、当時その規模は最大とも言われ、地元住民にも『二見の桜並木』と親しまれていましたし、かつては刑務所内の行事として囚人たちに桜を楽しませたこともあります。
しかし昭和29年に端野嘉多山線が道道に認定後、再び交通量が増加、昭和31年より改良工事が始まり徐々に桜は伐採されることとなり、遂には昭和58年からの大規模な改良工事により、湖側の桜並木の大半が失われ刑務所敷地内の桜並木だけが残ることとなりました。
『二見の桜並木』は、単なる景観ではありません。120年前の網走監獄・網走刑務所設置の事由であった北海道中央道路の痕跡を伝える貴重な歴史指標といえるものです。5月に桜が咲くとき、10月に桜が紅葉するとき、一本の 桜色の、紅色の線となり、かつてそこに存在した道の存在を思い起こさせてくれます。しかし、100年以上の樹齢を数える桜(エゾヤマザクラ、チシマザクラ等)は樹勢が衰え倒木したものも多く、延長約1,200mの並木には現在125本の桜が残るのみです。並木がその姿を完全に失うことはそう遠い日ではない状況にあります。
当館は、網走監獄が設置され中央道路開削工事が行われてから120年を迎えた本年、桜並木の保全事業を実施します。植樹する桜は、網走刑務所設置100年の平成2年に当時の網走刑務所職員有志によって刑務所敷地内に記念植樹されたものを用いることといたしました。この桜は刑務所施設の改修に伴い今後、施設建設が予想される場所に植栽されたもので移植の必要があったものです。20年に亘り現在の刑務所職員の皆さんが育ててきた桜を並木の保全を目的とする移植に用いることで歴史的な連続性を持たせることができました。この場を借りまして網走刑務所に感謝の気持ちをお伝えしたいと存じます。
二見桜並木につきましては、今後は地域の皆様や、桜並木の重要さを訴え続けてこられた関係諸団体の皆様により『二見・中央道路桜並木保存会』といったような団体を組織していただき、末永く保全維持されるものとなり、私たちはそのお手伝いをさせていただければと考えております。
移植作業につきましては、現在、網走刑務所との日程調整を行っているところです。日程が確定しましたら再度連絡をさせていただきます。
先ずは ご連絡まで。
平成22年10月20日
財団法人 網走監獄保存財団
博物館 網走監獄 館長
理事長 鈴木 雅宣