お寒うございます。
レンガ門前の寅吉でござんすよ。
間もなく弥生だっていう季節だが、ここ最果ての監獄、おてんとうさんが昇ってきても氷点下十五度だ。
こういうのをここらの人たちは「しばれる」っていうのさ。
この時期はさ、思いっきり息を吸い込むと鼻ん中がくっついちまうし、うかつには金物も触れねえ、手がくっついて酷えことになっちまう。
監獄の前の川も凍った。湖も凍った。
今朝も海は流氷で埋まっちまってる。
それでもねえ、周りの人たちは「近頃は日差しが強くなってきましたねえ」「まもなく雪も下がってきますねえ」なんてお話だ。
雪が下がるったって、きれいになくなるのは桜が咲く5月の寸前だあ。
我慢強いねえ、ここらの人たちは。
おいらももおちっと辛抱して出所の日を待ちましょうか。