2020年3月31日火曜日

学芸員の解説情報3

網走監獄の中央見張り所

網走監獄の舎房は五棟の放射状に配置されています。この形式はベルギーのルーヴアン監獄を模倣して従来の並列型獄舎から放射状配置の舎房に建て替えました。放射状舎房の要になるのが、五棟の入り口中心に設置された八角形の中央見張り所です。

網走監獄の舎房は雑居房146房独居房80房、合計226房収容定員700名ですが、多い時には最大で1000名を超える囚人を収容していました。大勢を効率よく管理するために、この中央見張り所が考え出されました。中央見張り所に看守部長が就き、看守部長の指揮のもと各棟の廊下に担当看守1名が巡回するのみで大勢を管理できる仕組みです。

監獄の建造物はまず第一に逃走防止、大勢を管理する集合性、機能性が求められて建築されています。一般家庭のように快適性を求めて建築されていません。むしろ逆の発想です。中央見張り所を中心に放射状に配置される獄舎はフランス、ベルギーなど西欧において主流でした。この画期的な方法を日本の監獄建築に取り入れて北海道集治監や網走監獄の放射状舎房が誕生しました。

2020年3月30日月曜日

学芸員の解説情報2

網走監獄舎房の天窓

明治45年に再建された網走監獄舎房は、江戸時代の牢屋敷から脱却し欧米列強と肩を並べられるようにと司法省の技師が海外視察を重ね、近代国家日本の監獄に相応しい獄舎建設を推進したものです。和洋折衷の建築の中でも天窓は最たるものです。

  1. 高さ7.4mの屋根に取り入れた天窓ガラスは厚さ7mmそして鉄線が施されています。
  2. 天窓を通して光が差し込みます。
  3. 暗い牢屋敷から明るい舎房へ受刑者の心情にも配慮されています。
  4. 天窓を取り入れるためクイーンポストトラス(洋小屋組み)にしています。
  5. 小屋組みに強度を持たせるため鉄筋の開き止めが施され建築美を醸し出しています。

2020年3月28日土曜日

学芸員の解説情報1

コロナウイルスの影響で博物館網走監獄は、解説員による無料ガイドツアーを今しばらく中止させて頂きます。

それでも毎日来館してくださる見学者の方、またお家でホームページをご覧頂いている方に少しでも監獄建造物の特徴を知って頂きたいので、学芸員が解説する建物の情報を少しずつご紹介します。

第1回目は「網走監獄舎房の錠」についてです。

監獄建築は一般建築と基本的に違う構造ですが、一番違部分はといえるでしょう。
その特徴は、
  1. 監獄内で自家製造していること
  2. 仮締まり及び施錠状態を目視確認できること
  3. 自動仮締まりにできること
  4. シンプルで壊れにくく監獄内で修理できること。何より、逃走の危険性を排除し看守の負担を軽減するようになっています。